写真は鉄で出来ている。

撮らない豚はただの豚だ

通達236 「 実録!青春18きっぷで乗るムーンライトながらの旅 2017夏遠征その1 」

この記事をご覧いただき、ありがとうございます。

 

 

 

 私が働いている会社は普段、日曜と祝日にしかお休みがありません。

まとまったお休みはGW、お盆と年末年始くらいでしょうか。

 

秋の連休は基本、お仕事で消えてしまいます。

 

休暇も取ろうと思えば取得できるのでしょうが、社長がちょっとアレなので、ほとんど取りません。

 

まぁ、真っ黒な企業でございます。

真っ黒な商品こさえてますんでね…

 

 

そんな私の環境では、年末年始は家の用事で潰れますので、

まとまった休みでの遠征など

このお盆くらいしかありません。

 

そこで、お盆休みには普段なら行くことの叶わない栃木県へ、SL大樹の撮影に行こうと画策しておりました。

 

移動手段も関西から栃木県ですと、新幹線乗継、高速バスと鉄道、飛行機と…など

多岐に渡るのですが経済的に裕福な環境ではありませんので、ここはひとつ、

節約も兼ねて学生時代に戻った気分で18きっぷを使用してみようと思い立ちました。

 

 

そこからが大変です。

 

 

まずはルート検索。

 

大判の時刻表とネットアプリを駆使して、お仕事あがりである

12日の夕方に関西を発ち、SL大樹の1号が撮影出来る手段を調べてみたのですが、

どうしてもムーンライトながら号に乗車しなければ間に合いません。

 

しかしこの列車、全席指定の超がつく人気列車でございまして、私が乗車したい8/12はお盆休み前半、激戦は必至でございました。

 

そこで1か月前のチケット発売日、午前中に緑の窓口へ駆け込みまして

10時発券前に指定席を申し込みます。

 

10時と同時にマルスを操作し出す駅員さん。私は申込み3番目でございましたが、

奇跡的に残っていた通路側の座席を確保することが出来ました。

 

後日、18きっぷも購入して遠征の準備は万端でございます。

 

 

 

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2017-08-12 スタートの記念に  出立の駅

 

最寄りの駅でスタンプを押してもらい、1日目を消費致します。

 

18きっぷを購入するのなんていつ以来なのでしょう。20年ぶりくらいでしょうか。

 

高揚する気分を押さえつつ、

まずはJR西日本JR東海の境界駅となる米原駅を目指します。

 

 

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2017-08-12 223系車内  米原

 

 乗車した列車は京都駅を過ぎると立席客が少し減り、草津近江八幡と停車する毎に

乗客の数が減って参りました。

 

終点の米原へ到着すると、近江鉄道線に乗り換える高校生のグループが

ダッシュして行き、それに続いて各線へ乗り換える人々が降車して行きます。

 

空になった車内を一枚、撮影し私も降車、次の大垣駅までお世話になる

JR東海の車両が待つプラットフォームへ跨線橋を跨いで移動です。

 

 

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2017-08-12 313系6連  大垣

 

米原までの223系は12両だったのですが、米原から乗り換えた列車は半分の6両編成。

 

それでも立席乗車はほとんど無く、ほぼ着座した乗客だけで

ここ大垣までやって来れました。

 

 

大垣駅のプラットフォームをぶらついていると、

カメラをぶら下げたヤングボーイ達の姿が散見されます。恐らく彼らも今宵一晩、

共に行軍する仲間なのでしょう。

 

 


その起源を戦前の長距離普通列車に遡る、

由緒正しき列車「ムーンライトながら」。

 

2009年頃までは毎日運転される

定期列車でありまして、指定席を含む自由席車両がほとんどの編成で

運転されておりました。

 

 

私が初めて東京近郊へ遠征に出た、1990年代初頭でございます。

 

この列車に乗車する為にはまず、

座席を確保するために数時間前から所定の位置で列形成を行い、

その間に見知らぬ鉄仲間さん達と友好を育み、情報交換をしたりしつつ

女子大生さん達に懐いて可愛がられ、

女の子の甘い香りに魅了されたものでございました。

 

秘訣は、女子大生グループがいる列に一緒に並ぶ点でございます。

 

 

所が今では全車指定席、季節臨時列車、とずいぶん時代が移ろいました。

その分並ばなくても良くなってあの頃とは違うのだな、と痛感いたします。

 

 

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2017-08-12 313系2連  大垣

 

並ばなくても良くなったものの、

列車が入線してから発車するまでは5分程しか無い為、大垣駅の改札外で軽食と

飲み物を購入して、取り敢えず乗車する号車札の位置で

並んでいるメンツに加わります。

 

入線までまだ30分ほど時間があったのですが、4,5人ほど既に並んでいらっしゃいました。

 

待ち時間が退屈だったので、並びながら美濃赤坂行の2両編成を撮影してみます。

 

いつもの編成画像ではなく、ベンチに腰かけて読書にふける美女(多分。)を主題に、

都会とも田舎ともつかない風景を切り取ってみました。

 

 停車する313系は乗車可能だったのですが、冷房がキツイのか読書に夢中なのか、

女性は、列車が発車する間際までベンチで読みふけっておりました。

一体どんな本をお読みなのか、聞いてみたい気になりますが、案外BL本だったりするかも知れません。

 

夢が壊れるのも寂しいので、聞かないのが花なのでしょうね。

 

 

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2017-08-12 185系方向幕  大垣

 

22:45、大垣駅へ入線した「ムーンライトながら」。

方向幕の東京と言う文字が旅情を掻き立てます。


 

乗車はスムーズで、流石は全席指定でございました。

 

昔なら座席取得の闘争で

10人くらい死人が出るのは茶飯事でございます(嘘です)。

それくらい皆、必死になってBOX席を争い窓際争奪をしていたものでございました。

 

着座出来なければ一晩、立ちん坊でございましたから…

 

 

発車までの間に車内アナウンスが、この列車は全席指定で本日は満席、

指定券が無いと乗車できません、という旨を繰り返しておられました。 

 

 

仮に指定券を持たず乗車した場合、どうなるのでしょう。

 

勿論途中で降ろされるのでしょうが、例えば終電の無くなった浜松辺りから

乗車するとして、やはり次の停車駅である沼津で放り出され、始発まで説教部屋送りと

なるのでしょうか。

 

余り知りたくない話ではありますが、

車掌さんの裏話として飲み屋なんかで話しているのを、こっそりと後ろで

聞いてみたい気もします。

 

 

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2017-08-12  モハ185-232 車内風景

 

列車は大垣を22:49、定刻に出発し、岐阜、名古屋と順調に進んで参ります。

 

 

しがないオヤジの一人旅。列車は全席指定。

座席は二人がけで満席。

 

となれば、お隣に腰掛けるのはどんな方なのか、否応にも気になります。

 

カメラをぶら下げたヤングボーイか、それとも、うら若き黒髪の乙女か。はたまた同類のオヤジが座るか…

 

隣の方は発車間際に漸くやって来られました。

 

 

これが意外や、大当りでございまして、年の頃なら30〜40代、

少し膨よかな体格の男性で、

大きなボストンバックにリュックサック、更には某百貨店の紙袋を下げて現れました。

 

窓際席の彼は、通路側の私の膝を突き破る様に突進してくると、

荷物が周囲(私)に当たるのも気にせずにぶん回し、

網棚に積み上げ、紙袋をコート掛けのフックへ吊るして、後席も顧みずリクライニングを下げて漸く人心地。

 

さぞお疲れだったご様子でした。

 

 

そこですかさず私が一言。

トイレなどに立つ際は遠慮なく声を掛けて下さいね、脚を避けますから。と伝えると

わかりました、の返事の後に唐突に彼の家族の話が始まります。

 

突然脈絡なく話が始まり戸惑う私を置き去りに、父は高齢で新幹線移動を希望し、兄は飛行機、コレに乗車するのは自分だけだ、との内容で話し出す彼。

 

更に、兵庫から会津へ一人旅だ、鉄道が好きで詳しい、という様な内容を延々と、大きな声で聞かせて下さいました。

 

家族は現地で合流か、と思えば父は自宅、兄はアチコチと転勤しているそうな。

 

全く見えない話を頭で咀嚼しつつ、彼の大きな話し声に対して大丈夫、私は耳が遠くなる様な歳ではありませんよ、と心の中で呟きながら適度に相槌を打ちつつ過ごします。

あ、ヤリ過ごします、でした。

 

 

話していて気づいたのですが、隣の彼、矢鱈とコロッケの匂いを振りまいております。

 

彼の荷物からなのか、身体からなのか、洋として知れませんが、私は密かに彼の事をコロッケ君、と名付けたのでした。

 

 

俄かに不安に包まれた私を慰めてくれたのは、不意に流れ出したメロディでした。

 

そう、ハイケンスのセレナーデが流れたのでございました。

 

コロッケ君もやおら口を閉ざし、メロディとそれに続くカレチのアナウンスに耳を傾けていました。

 

 

 

ホームに並ぶ近郊の乗客を尻目に、闇夜を突き進む185系10両。

 

私が乗車したのは4両付属編成の前から2両目、パンタ付の電動車でございました。

そう、国鉄時代に製造された最後の特急電車、185系はご多分に漏れず

うるさいのです。モーター音が。

 

正直この車両はかなりの音量でモーターが唸りを上げて走行するので、

しっかり眠りたいのであれば耳栓が必須かも知れません。

いやそもそも、しっかり眠りたいのならこの列車に乗ってはいけませんが。

 

 

名古屋を出て豊橋へ向かう爆走区間から国鉄モーターは、その本領を発揮します。

 

 目を瞑っていると、子供時代に揺られた113系117系の車内が蘇るあのモーター音。

 

眠るつもりのない私はこの爆音モーターを存分に楽しんでおりました。

 

 

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2017-08-13 185系B4編成+B7編成  浜松

 

何故、私は眠るつもりがなかったのかと言うと、この列車、東京までの

停車駅で2か所、バカ停があるのです。

 

まずは浜松駅、ここでは深夜1時過ぎでございますが時間調整の為9分ほど停まります。

その間に行ったん降車してホームの反対側へ渡り、更に先頭まで進んでの写真撮影。

 

しかし残念なことに、浜松駅ではホーム先端に屋根が無く灯りが有りません。

面は暗く潰れてしまいました。

 

ですがまだ諦めてはいけません。続く沼津駅では3時台の到着ですが、ここでも

14分の停車時間があるのです。 

 

というわけで、眠らずにウトウトしながら次の停車駅を目指します。

 

時折ハッと目を覚ましてはスマホを弄って翌日の撮影地点確認や

ダイヤの覚えなおしをして時間を消化して行きます。

 

 

ムーンライトながら」に使用されている車両は、先にも申しました185系という

国鉄時代に製造された特急車両でございます。

車両によっては音がうるさいのですが、座席はしっかりとリクライニングが出来、

しかも頭を左右に振っても、ヘッドレストの様な出っ張りが

頭部を受け止めてくれるので、隣の人の肩へ頭が乗っかる心配もなく

眠る事が出来ます。

 

ここは素直に高評価でございました。

 

 

 

午前2時を過ぎた辺りから、隣のコロッケ君に襲撃を受けます。

 

窓に頭を付ける様にして眠る彼の下半身が肘掛けを潜り抜け、私の太ましいフトモモを圧迫しだしました。

 

最初は気にしていなかったのですが、次第に私の身体が通路へ押し出されるにつけ、危機感を抱きまして。

 

コロッケ君の肩を叩いて起こすと、眠る体制を変えて貰わねば私が席から落ちてしまいますわ、と訴えたのでした。

 

気の良いコロッケ君、すぐ様気づいて姿勢を正してくれたのですが、15分後にはまたしても襲撃が。

 

 

他にも深夜、コロッケの匂いに空腹を刺激され、悶々とした時間を過ごす羽目になりました。

 

コロッケ食べたい…そうひたすら願ってしまいました。

 

 

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2017-08-13 185系B4編成+B7編成  沼津

 

午前3時を回り、本命の沼津へ到着でございます。

 

浜松より余裕を持って撮影し、車内へ戻ります。

先頭まで光が回るので、編成が綺麗に抜けました。

 

 

ここから終点まで、約2時間は仮眠タイムとなります。

 

流石に身体も疲れて参りまして、気が付いたら横浜を過ぎておりました。

 

 

コロッケ君はどうやら次の品川で下車するらしく、網棚から荷物を降ろそうとしていらしたので、席を立ってスペースを空けて差し上げます。

 

すると直ぐに品川のホームへ列車が到着致しました。

出口へ向かうコロッケ君に、良い旅を!と声を掛けると、彼も笑顔で手を振って下さいます。

 

ホームに降り立った彼は窓から注視する私には見向きもせず、昇降口へと駆けて行きました。

 

さらばコロッケ君!フォーエバー!

 

 

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2017-08-13 E233系京浜東北線  東京

 

品川を出た車内では、直ぐにハイケンスのセレナーデが鳴り響き、旅の終わりを告げます。

 

 長かった戦い、じゃないや乗車もようやく終わり、ついに東京駅へ降り立つ事が出来ました。

 

 

ですが、私の目的地は更にここから進まねばなりません。

 

目指すは栃木、鬼怒川線

東京駅は通過点でしかありません。

 

東京はトラップが一杯でございました。

 

が、その辺のお話はまた別の機会と相成ります。

 

一先ずは結びとさせていただきます。

 

 

なんとなく、ムーンライトながらの雰囲気が掴めていただければ幸いでございます。 

 

 


 

それでは

この記事をご覧いただき、ありがとうございました!