写真は鉄で出来ている。

撮らない豚はただの豚だ

通達178 「 D51 200号機のATS-P制動試験を狙う その1 」

この記事をご覧いただき、ありがとうございます。

 

 

 

大きな古時計、という童謡があります。

ご存じない方のほうが少ないのではないか、というくらいに

著名な歌でございます。

 

優しい旋律にのせて、時計が見守る男性の生き様をそつなく語る歌詞は

幸せでいて、少し哀切な気分にさせるのです。

 

 

梅小路蒸気機関車館、というSLの博物館が京都にありました。


 今は京都鉄道博物館となりましたが、

沢山のSLが扇形の機関庫に並んだ姿は迫力があります。


それでも私にとってその姿は、

一抹の淋しさを感じさせるものでもありました。



かつて、鉄道輸送に日本国内を駆けずり回ったであろうSL達の静かな余生。

 

大きな古時計の歌詞にある「今は、もう、動かない…」というフレーズが

ちょうど、ずらりと並んだSL達のイメージと被るような感じがしていたのです。

 

 

そんな梅小路のSL達の中で、2014年にD51の復活計画がアナウンスされました。

 

私は当時、まだ鉄への復帰など考えていなかった頃でしたが、

このニュースを聞いて驚いたものです。

 

何故なら、梅小路のSL達は見た目以上に蒸気機関が痛んでおり、

構内走行ならまだしも、本線走行をさせるには大変な修繕が必要だという事を

子供時代から耳にしていたからでした。

 

その予想通り、事態はとても困難を極めたようでした。

心臓ともいえるボイラー部分の修繕には2年を要し、

キャブやテンダーの水槽部分などは台枠以外ほぼ新造だとか。

 

関係者の大変な努力の上に、漸く昨年秋、試験走行を実施する所まで

漕ぎ着けたのですが。

 

北陸本線へ試運転に向かう途中でテンダー車に軸焼け故障が発生し、

走行自体が困難となりまして、野洲電車区へ緊急入庫し応急処置。

 

そのまま途中で梅小路まで引き返すトラブルにより復帰が大幅に遅れてしまいます。

 

 

そんなトラブルも乗り越え、いくつもの課題もクリアーし。

 

もう動かないと思われていた、

D51 200号機が動く姿をこの日、私も目にする事が出来ました。

 

 

 

さて、今回の更新からは6月の頭にSL北びわこ号と同じルートで

復活を遂げたD51 200号機の試運転が実施されました模様を

全3回に分けてお知らせ致します。

 

この試運転、有難い事に土、日の二日間で実施されました。

 

 

私が撮影したのは4日の日曜だったのですが、試運転自体は

前日の3日から行われておりました。

 

前週の金曜にミハソの12系5両が米原へ送られ、3日の朝にD51が米原へ。 

 

びわこ号の3号スジに近い時間帯に1本運転されておりました。

 

明けてこの日は日曜。私も仕事がお休みなのと、営業運転スジにて2本運転される

設定だったので、2週連続の湖北遠征に出掛けて参りました。

 

D51は前日に送り込まれている為、早朝の回送が無いので余裕をもって自宅を出立。

 

前回訪れた金色絨毯の撮影地、長浜ー虎姫へと向かいました。

 

 

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2017-06-04 681系W04編成  長浜ー虎姫

 

先週に引き続き美しい金の前景。

露出が高い結果となったのを練習電で確認し、すぐさま修正します。

 

 

f:id:kyouhisiho2008:20170610215315j:plain2017-06-04 521系E1編成  長浜ー虎姫

 

福井へ向かう521系

爽やかなブルーのラインがこの天候によく合う様に思えます。

 

そうこうしているうちにSLがやってくる時間になりました。

 

試運転なので事前に広報はされていないのですが、この時点で

既に20人ほどの鉄さん達がこの場所へ集結。

 

D51がやってくるのを待ち構えます。

 

ポォ―!という汽笛が彼方から聞こえました。

 

 

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2017-06-04 試9221列車  長浜ー虎姫

 

山間部の峠を走るやまぐち号と比べると弱々しくはありますが、

しっかりと煙を上げてやってきました、D51

 

 幾多の苦難を乗り越えて今、客車を牽引しながら本線上を走る姿を目にした時、

復活プロジェクトに携わったスタッフのご苦労がようやく報われたのだと、

感慨を我が事の様に想像してしまい、思わず涙腺が緩みかけてしまいました。

 

 

遠くからでもよくわかる

今風のシールドビーム型ヘッドライトに換装した姿は

現代に蘇ったスタイルを象徴している様にも思えます。

 

 

列車はいつもの9241レよりもほんの少し遅いスジで、ゆっくりとやって来ました。

ポニーと違って標準機のSLはより一層の迫力がありました。

 

 

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2017-06-04 試9221列車  長浜ー虎姫

 

復帰はしたものの、まだ本調子では無い為か

前の週に撮影した北びわこ号のC56に比べて、かなり低速でやってきたな、と

思いながら本命ショットを撮影。

 

ランボードやボイラバンドが光っていて美しく、ボイラも後方へ向けて

少し膨らんだ形状がグラマラスな印象でございます。

 

ヘッドマークも無く、客車も窓がすべて閉まった状態なのは

試運転ならではでございました。

 

 

などと堪能していると、どうした事か私たちの前を通り過ぎてすぐ、

停車してしまいました。

 

 

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2017-06-04 同上  長浜ー虎姫

 

C56と違いテンダーにまで迫力があります。

 

煙を見てみると

後方、つまりこちら側へ流れておりません。真横へ流れております。

 

ここで停車してしまいました。



 傍の踏切が鳴動し続けていて、そこはかとない緊張感が辺りを包みます。

 

何かあったのでしょうか…!?

 

 

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2017-06-04 同上  長浜ー虎姫

 

信号待ちでもなく停車するD51の横を、対向の223系が通過していきます。

 

やがて。

この少しあとに、煙をしっかり噴きながら激しく汽笛を鳴らして、

何事もなかったかの様に静々と走り出していきました。

 

 

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2017-06-04 同上  長浜ー虎姫(後打ち)

 

ようやくオマケの撮影も出来ました。

営業運転時と異なり、テールマークの掲示が無いスッキリしたうしろ姿。

 

12系の素顔まで狙えました。

 

 

後から聞いた話では、列車自動停止装置(ATS-P)が正常に作動するかどうかの

確認試験として停車したとの事だったそうでした。

 

 

それにしてもまさか目の前で停車するとは思っていなかったので、

随分とラッキーな目にあった事になります。

 

この時は、今日の私は運が良かったと大いに喜んでおりました。

 

 

まさか、あんな事になろうとは。

 

 

 

 

それでは、

この記事をご覧いただき、ありがとうございました!